子どもと大人の1対1の対話

私たちは、信じています。誰にも無限の可能性があることを。しかし、時に1人だと自分の可能性を信じられなくなることがあります。自分自身が「未来はつくれる」と信じられるためには、誰か1人でも自分の可能性を信じてくれて、心から応援してくれる存在が必要だと考えています。そのような人との出会いを届ける授業が、この「子どもと大人の1対1の対話」です。小・中・高校生と地域の大人が、1対1の対話を通して「これからどんな大人になりたいか」を一緒に考えます。誰かのために本気で向き合うこと、誰かに本気で応援してもらえること、その対話の営みがひとの心に火を灯します。

POINT

# 本音で話せる環境づくり(ナナメの関係と1対1の対話)

普段子どもたちが関わる人といえば、自身の親や先生といった「縦の関係」、もしくは同級生のような「横の関係」の人が多いと思います。子どもと大人の1対1の対話で大事にしているのは、そんな「縦」でも「横」でもない、ちょっと年上の地域の大人のような「ナナメの関係」の人との対話です。そして、もう1つ大事にしているのが、友達にも先生にも聞かれない、1対1で話ができる空間です。誰にも聞かれず、ナナメの関係の大人と話せる環境をつくることが、本音の対話に繋がると考えています。

# 講演ではない、対話

子どもと大人の1対1の対話は、講演活動ではありません。参加できる人は経験値や年齢は関係なく、生徒の今をしっかり向き合い、その生徒にどれだけ寄り添った言葉をかけられるかを大事にしています。また、大人が子どもたちに対して一方的に学びを与えるのではなく、子どもたちとの対話の中で、むしろ大人も学ぶことがある、”半学半教”の時間です。

# 憧れの連鎖

自分よりちょっと年下の誰かのことを本気で考えて、向き合い、応援することは、その人の心に火を灯します。その火は、自分も誰かの力になりたいという気持ちを育み、また誰かの心に火を灯していきます。ベテラン社会人から、若手社会人へ、若手社会人から中高生へ、高校生から小学生へ、憧れの連鎖が広がっていきます。

EXAMPLE

# 中学校での対話の場

中学校での対話の場は、中学校区の社会人を中心とした大人と子どもたちが語り合います。中学校の学校区内の公民館と連携し地域の大人を集め、大人向け研修を行います。その研修を受けた地域の大人が、中学校に出張し、先輩として「人生グラフ」という大人の人生を振り返れるワークシートを使い、自らの経験を語ります。そしてその後、対話を通じて、部活や勉強で忙しい毎日を過ごす中学生が今までの自分を振り返る、自己理解を促します。このプログラムによって、思春期真っただ中の中学生だからこそ、普段親や先生のように利害関係のある人には話せない悩みや相談事を自分で言葉にできたり、地域の大人の姿から将来へのイメージが前よりも出来るようになったりするといった声などを聞いています。また、参加者の大人側も、本事業をキッカケに地域の方や公民館と繋がり、その後の地域づくりに関わるコミュニティに参加するキッカケにもなっています。

# 高校での対話の場

高校での対話の場は、企業の若手社会人を中心とした大人と子どもたちが語り合います。高校卒業後に就職する生徒も一定数いる益田市だからこそ、高校生の時点で大人がどんな価値観で、どのような思いで仕事をして、どのように生きているのか、生き方のロールモデルとの出会い、自分の将来についてより具体的に考えるプログラムとなっています。市内の事業所と協力し、地元企業へ呼びかけ、多くの大人の方々が参加してくださっています。それにより、高校生の成長に繋がるのはもちろんのこと、高校での対話の場は学校と企業が互いに連携するキッカケの場になっています。子どもと大人の1対1の対話が学校と企業とを繋げると共に、『子どもを育むことが地域のミライをつくること』という共通認識を大人側も再確認できる場となっているのです。

# 小学校での対話の場

小学校での対話の場は、中・高での対話の場を受けてきた高校生3年生が子どもたちと語り合います。テーマは、思春期を終えた高校生から、これから思春期の小学生へ。今まで対話の場を受ける側として経験してきた高校生が、今まで対話の場などで考え、学んできたことの集大成として、自らが語り手となります。高校生自らが小学5-6年生に自分の生き方について本気で語る場を届けることで、小学生も高校生も、ともに成長する機会となっています。

RESULT

# 子どもと大人の1対1の対話の参加者数の推移

# 生徒への効果

# 大人への効果

子どもと大人の1対1の対話を体験した子どもたちの自己肯定感が高まるとともに、対話を届けた地域の大人の想いに触れることでこのまちにかっこいい大人がいることを知り、そんな大人がいるこのまちは魅力的だ、と感じるようになるという、地域愛を育む機会にもなっています。子どもと大人の1対1の対話プログラムを1つのきっかけとして、地域全体で子どもたちを育むまちづくりに繋がっています。

PHOTO GARALLY